特定技能外国人の賃金の考え方は?給与相場や注意点も解説


1 特定技能外国人の賃金の決め方

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 特定技能外国人を雇用する場合、当然ではありますが、雇用契約を締結し、その中で賃金を合意することになります。

 今回は、特定技能外国人についての賃金について、見ていきたいと思います。

(1)賃金と労働法

 雇用契約も契約であり、契約の内容をどのように定めるかは当事者の自由であることが原則です。しかし、雇用契約については労働基準法や最低賃金法等の法令で制限がおかれています。これは、一般的に労働者は使用者と比較すると弱い立場に立つことが多いため、何も規制がなく自由な契約交渉にゆだねてしまうと、労働者に不利になってしまうことによる弊害を防止するためです。

(2)最低賃金とその種類

 まず、賃金で重要な機能を果たすのが最低賃金です。最低賃金については最低賃金法に基づき定められており、賃金の底抜けを防止する機能を持っています。

 最低賃金は、地域別最低賃金と特定最低賃金の2つの種類があります。

 地域別最低賃金は、一定の地域ごとに定める最低賃金をいいます(最低賃金法9条1項)。都道府県ごとに定められている最低賃金がこちらです。

 

 この地域別最低賃金とは別に、特定最低賃金という別の種類の最低賃金が存在します。特定最低賃金は、一定の事業若しくは職業に係る最低賃金をいいます(最低賃金法15条1項)。特定最低賃金の例としては北海道での「処理牛乳・乳飲料、乳製品、糖類製造業」(時間額:996円)等があります。

 地域別最低賃金と特定最低賃金と両方の適用を受ける場合には、そのうちの高い方の最低賃金を適用することになります(最低賃金法61項)。

特定技能外国人は産業分野が明確であるため、特定最低賃金に該当する場合もあります。地域別最低賃金だけではなく特定最低賃金についても、適用がないか、確認するようにしましょう。

3)同一労働同一賃金

 同一労働同一賃金は、日本では、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間の不合理待遇差の解消を目指すものとして導入されています。

 代表的な条文としてはパートタイム・有期雇用労働法8条です。

 パートタイム・有期雇用労働法8条は、正規雇用労働者と有期・短時間労働者との間の均等均衡処遇を定めたものです。図にすると次のとおりで、限定正社員より先の契約社員・パート・アルバイトと、雇用形態が変化するにつれ、職務の内容やその他の事情が変化します。それにあわせて待遇も均等・均衡に処遇されることを確保するものだといえます。

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(4)同等報酬要件

 他方で、特定技能制度では、多くの働くための在留資格と同様に、同等報酬要件というものが定められています。同等報酬要件とは「日本人が従事する場合の報酬の額と同等以上である」ことを求めるものです(特定技能基準省令1条1項3号)。

 同等報酬要件はパ有法8条と異なり、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間格差是正を目的としたものではなく、特定技能外国人が同じ労働に従事する日本人と「同等以上」の報酬が支払われることを確保するものであり、正規対非正規という比較ではありません。

 あくまで、特定技能外国人と同じ労働に従事する日本人労働者との均等処遇を求めるものといえます。

 具体的な比較の方法は、同程度の技能等を有する日本人労働者がいる場合には、当該外国人が任される職務内容やその職務に対する責任の程度が当該日本人労働者と同等であることを確認した上で、当該日本人労働者に対する報酬の額と同等以上であることを確保することになります。

 同程度の技能等を有する日本人労働者がいない場合については、特定技能外国人に対する報酬の額が日本人労働者に対する報酬の額と同等以上であるということについて、賃金規程がある場合には同規程に照らした個々の企業の報酬体系の観点から、賃金規程がない場合には、例えば、当該外国人が任される職務内容やその職務に対する責任の程度が最も近い職務を担う日本人労働者と比べてどのように異なるかという観点から検討することになります。

(5)法律に適合する賃金を支払わなかった場合

 法律に適合する賃金をしはらわなかった場合には、地域別最低賃金を下回る場合には、50万円以下の罰金が科されます(最低賃金法40条)。

 また、特定技能基準省令に適合しなくなるため、特定技能外国人の雇用ができなくなります。

2 特定技能外国人の賃金

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 特定技能外国人の賃金は、日本人と「同等」である必要があります。

 その他に、賃金に関するルールも同様に適用されます。時間外や法定休日における割増賃金の支払い、賃金控除における労使協定、有給の付与は、日本人と同調に労働基準法が適用されることになります。

 賃金控除の労使協定については、締結漏れが多くなっているので注意が必要です。

 また、特定技能外国人については、特定技能基準省令1条で「外国人が一時帰国を希望した場合には、必要な有給休暇を取得させるものとしていること。」と定められており、一時帰国の際の休暇についての配慮が求められます。

 特定技能制度に適合するように、休暇制度を整えていない場合には、法令に適合する休暇制度を設けることが望ましいといえます。

3 特定技能外国人の給与

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(1)平均額

 令和5年令和5年賃金構造基本統計調査結果の概況によれば、特定技能外国人の給与の平均は、198,000円であり、技能実習生の181,700円と比較すると、若干高額となっています。

(2)特定技能外国人の平均賃金が高い理由

 特定技能外国人は、多くの場合、技能実習の修了者です。そして、技能実習2号修了者であればおおむね3年間、技能実習3号修了者であればおおむね5年間、日本に在留し技能実習を修了した者であることから、従事しようとする業務について、おおむね3年程度又は5年程度の経験者として取り扱う必要があります。そのため、3~5年経験がある日本人労働者と比較するため、賃金が高くなるといえます。

4 まとめ

 特定技能外国人については、国籍に関係なく適用される賃金に関するルール(最低賃金等)と、特定技能制度のルール(同等報酬要件等)の両方が適用されます。

 この両方のルールについて、自社の運用が法令に適合しているか、改めて確認してみてください。

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