ミャンマーの教育環境

ミャンマーの介護医療人材"専門講師による約1000時間の学習内容"とは

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日本語学校の講師のご紹介

吉本政生(以下、吉本):私たちスタッフプラスは、ミャンマー最大級の日本語学校から、介護・病院の人材をご紹介していただいています。そこで今回は、介護・病院の知識に特化した先生にインタビューさせていただければと思います。順子先生、自己紹介をお願いしてもよろしいでしょうか。

活山順子先生⁩(以下、順子先生):活山順子と申します。私は数年間、主に高齢者の方を担当する病院の内科で働いていました。それから訪問入浴のお手伝いもさせていただいたこともあります。

吉本:具体的に訪問入浴というのはどのようなお仕事をされていたんですか

順子先生:訪問入浴では3人1つのチームになってご利用者様のお宅に伺い、看護師の仕事としてはバイタルチェックをしたり、更衣介助などをさせていただきました。

吉本:そうなんですね。病院の内科でもお勤めだったということで、その時どういったお仕事をされていましたか。

順子先生:患者様はほとんどが寝たきりで、バルーンが入っていたり、胃ろうが入っていたり、中心静脈栄養の方がいらっしゃったり、そのようなところで介護の仕事をしました。

吉本:なるほど。そちらの病院では看護助手の方も働いていましたか。

順子先生:はい、いらっしゃいました。

吉本:看護助手の方とも連携をして、お仕事をされていたということですね。それでは病院の看護助手の方とのコミュニケーションとか、どういった仕事をされてるっていうところも、把握されているということですね。

ミャンマー人材の特徴

吉本:それでは順子先生、次にミャンマー人材の特徴をお伺いしたいと思います。

順子先生:2018年にはじめてヤンゴンに来まして、その時の印象がミャンマー人は優しいということでした。私はミャンマー語を話せないのですが、すごく辛抱強く私の分からないミャンマー語の話をよく聞いてくれます。心が優しくて綺麗というのが第一印象でした。

このエージェンシーで勉強されている皆さんも、とても心が綺麗です。そして介護を目標にされているので人に対してとても親切です。私が一番好きなのはミャンマー人の皆さんの笑顔です。ミャンマー人の皆さんの笑顔で、高齢者を幸せにすることが出来ると思っています。

吉本:笑顔が素敵で優しいんですね。例えば、どういったところに優しさを感じたりしますか。

順子先生:例えば、私だったらバスに乗っていて、助けが必要な人を見たとしても、手を出してお手伝いしようかちょっと迷ってしまいます。それは日本がそういう文化だからです。でもミャンマーでは助けが必要だと分かった時に、すぐに手を出してくれます。例えばミャンマーのバスはすごく揺れます。そこで人がたくさんいると私コケかけるんですけど、その時に後ろにいた人がパッと私の腕を掴んでくれたことがあります。もう自然と誰か困っている人がいたら助けないといけないというところが文化的にあります。


吉本
:そのパッと体が動くというのは教育なんですかね。学校で教えているとか。それともお父さんお母さんが、人に優しくしないさいということを教えているから、そういうふうに優しいんですかね。

順子先生:私もミャンマー人に直接聞いたことは無いんですけども、やはりミャンマーは宗教的文化がしっかりしていて仏教の方が多いので、人に良いことを行うということが小さい時から訓練されていたり、お父さんお母さんを見て育ってらっしゃるんじゃないかと思います。

吉本:なるほど。ではもうミャンマーに今住んでいる方全員が、まさに仏教の人口が多い国なので、皆さんそういう方が多いということですね。

順子先生:そうですね。国としてですね。

吉本:まさに病院とか介護で必要な心ですよね。素晴らしい。

外国人材とのコミュニケーションのコツ

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吉本
:私たちスタッフプラスが人材紹介をしている病院様・介護施設様から『入社した人材にどのように接して、どのように伝えていけばいいのか』と言う質問をよくいただくのですが、ミャンマーの方がご入社されたら『こういうふうに伝えると聞き取りやすい、伝わりやすいよ』というようなことがあったら教えていただけますか。

順子先生:授業の時にも心掛けているのは、出来るだけ短い文章で伝えるということです。

吉本:短い文章で伝える。

順子先生:はい。長い文章で「このようにしてください」と伝達するとちょっと難しいので、まずは結論の部分を伝え、その後に理由を言う。というふうに短く区切って伝えるとわかりやすいかなと思っています。

吉本:なるほど。接続詞とかで長くなってしまうと何が言いたいのか分からなくなってしまうので、最初にまず短く結論を伝えて、後で理由を短い文章で伝えてあげる方が良いんですね。今後、病院様とか介護施設様に聞かれた場合はそのようにお伝えします。ありがとうございます。

日本語学校での学習カリキュラム

吉本:それではこちらの学校に入られた学生の方たちが、どのようなスケジュールでどのような学習をしているか、教えていただけますか。

順子先生:このクラスには面接の準備している生徒さんと、面接に合格した生徒さんたちが一緒に勉強しています。それで面接のために介護の知識を少し勉強したいという方に合わせて、1ヶ月のスケジュールを組んでいます。

インテンシブの方には同じスケジュールを3ヶ月であったり4ヶ月の勉強していただくんですけど、繰り返し勉強することによって一度では分からないことも、どんどん知識が増し加わっているんではないかと思います。

吉本:今お話の中で出たインテンシブなんですけども、それは特定技能の介護の試験を合格された方をインテンシブと言われているんですかね。

順子先生:面接に合格した方です。

吉本:面接も合格した方をインテンシブと呼ばれているんですね。

順子先生:そうです。日本に行くことが決まった生徒さんたちが、こちらで4ヶ月勉強されているんですけども、一度では分からなかったことも繰り返し勉強していただいています。

吉本:素晴らしいですね。ありがとうございます。1ヶ月単位での教育内容を、簡単に教えてもらっても良いでしょうか。


順子先生
:まずは介護で使う物品の名前です。車椅子の各部名称、ベッドの各部名称、そして車椅子やベッドを使用する時の注意点、それからミャンマーの方は高齢者を知らない方が多いんです。そこで高齢者というのはどんな方なのかというのを授業の中で扱うようにしています。そうすることによって、生徒さんたちにも高齢者の気持ちになって介護してもらえたらなと思っています。

それから認知症の事についても勉強してもらっています。実技の勉強に関しては、移乗介助、排泄介助、オムツ交換も含んでいます。入浴介助、食事介助、口腔ケアに関してはYouTubeとか動画の説明になります。

吉本:ベッドがあったり車椅子があったり、実際にものを使いながら名称を覚えていただくのですね。

順子先生:はい。介護希望の方でも車椅子を触ったことがない方がほとんどです。それで自分で触れながら、車椅子の名前を覚えてもらうようにしています。出来るだけ日本の現場に近いものを、触れてもらって覚えてもらいたいなと考えています。

吉本:ありがとうございます。こちらの学校の人材がとても優秀で、私たちも介護の知識、医療の知識で最低限知っておいてほしいところが、必ず分かってらっしゃる子たちをご紹介出来ています。

チームケアについての指導方法

吉本:病院であったり、介護施設のお客様からよく『チームケアについてどのように学生に教えているか』という質問が多いので、普段どのように指導しているのか教えていただけますか。

順子先生:ミャンマー人に限らないと思うんですけど、私が何か指示を出した時に「はい」と答えてくださるんですね。「はい」と応えてもそれが実際に理解できているか分からないことがよくあります。実際に「はい」と言ったから出来るかなと思っても出来ないこともたくさんあります。そのような時は「こういうことですか?」と自分の言葉で確認してくださいと伝えるようにしています。

吉本:コミュニケーションとして一回伝えたことが正しく伝わっているのか。分からない事があったらなんでも聞いてという状態にするのですね。こちらの学生さんは、「はい分かりました」と言って違うことをするのではなくて、分からないことを聞くという環境が根付いているので、すごく助かっています。

順子先生:本当に最初は慣れが必要なんですけど、そのうちに「先生こういうことですか?」と言って自分の言葉に置き換えたり、私の目の前で見せてくれたり、確認してくれるようになります。

吉本:順子先生みたいになんでも聞いてもらえるような関係をどうやったら作れるんですかね。

順子先生:気を付けるようにしているのは、言ったことを自分でもするようにしています。例えば介護とかこういう現場では「清潔」ってかなり言われますし、生徒さんの皆さんにも掃除してもらうことを覚えていただくんですけど、出来るだけ私も時間があるときはみんなと一緒に掃除をしたり、みんなの前で一人で掃除をするようにして、言ってるだけの先生にならないようには気を付けようと思っています。

吉本:先生が率先して動かれているので、本当に私たちにとっても大事なことなんだなと伝わるということなんですね。

見守りについての指導方法

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吉本:最近現場でよく困ったなと質問をされることが、見守りについての考え方。どのような指示をして利用者様を見守りをすればいいのか、なにか良い指導方法があったら教えてもらえますか。

順子先生:例えば、ご利用者様が起き上がりました。そして車椅子移乗していただきます。その時に伝えるようにしているのは、端座位になった方が靴を履いていただいている間、あなたは靴だけを見ますかということです。ちょっと体が傾いているとか、そういうところまで気付くことができるように、声かけは人の目を見る。そして、ご利用者様の中には姿勢を保ちにくい方もいるので、手を添えるようにしてください。このように伝え、見守りの一つとして危険防止を呼びかけています。

吉本:ありがとうございます。

学生さんとのエピソード

吉本今まで順子先生がたくさんの学生さんに色々教えてきた中で、印象に残っているエピソードはありますか。

順子先生たくさんありますけどそのうちの一つは、先ほどもお話ししたように、私は日本へ行くことが決まっている生徒さんに掃除をしてもらいます。そうすると生徒さんによっては、伝えていないところまで綺麗に掃除してくれます。一つお願いするともう一歩進んで掃除してくれます。

吉本そうなんですね。

順子先生はい。お願いしたことをその通りにするっていうのは当然のことだと思います。でももう一歩進んでなにかしようって思うその心掛けは素晴らしいところだなって思います。

吉本それは人によっても差があるのですか。

順子先生人によっても差がありますけれど、ミャンマーの方はわりと、例えば掃除という目的を理解していると、そこまで動けるんだなと思います。

吉本清潔に保つという目的が分かっていると、細部にわたって自分で考えて行動を起こす。ということなんですね。

順子先生はい、そうですね。 

吉本素晴らしいですね。指示を待っているだけではなくて、そこに向かって何か行動を起こす、自分で考えられる人材が多いということですね。

認知症についての学習内容

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吉本
:認知症の学習内容と注意されている点などありましたら教えていただけますか。

順子先生:ここで学んでいらっしゃる生徒のみなさんは、認知症という病気はご存知です。それで認知症というのがどんな病気かということについて、もう少しだけ深い理解をしていただくために、YouTubeの中から実際にどんな症状があったり、話し方があるのか、そして表情があるのかを伝えています。

そうすることによって、認知症が一つの病気だということに加え、高齢者の方はどんなに不安を抱えながら生活していらっしゃるか、ということの理解も深めてもらうようにしています。その中で、否定しないということであったり、命令しないという基本的なところも皆さんにお伝えしているようにしています。

吉本:学生さんが認知症について学習をしていただく際に、よくもらう質問とかはありますか。

順子先生:認知症に関しての質問はありませんけれど、ある生徒さんがFacebookで、外国人が日本で働いている時に、ご利用者様が「私のこれをあなた盗ったでしょ」というふうに責めて、その外国人の介護士は泣いてしまったという投稿を見つけました。じゃあ先生、ずーっと「あなたが盗った、盗った、盗った」と責められた時どうしたら良いですか。と質問されたことはありました。

吉本:そういった質問をした時に「こういうふうなところに気を付けた方が良いよ」と聞いたら教えていただける先生がいるというのは、生徒さんにとっても心強いですね。

順子先生:そうですね。一人の生徒さんが質問してくださったことは、必ずグループのチャットでみなさんと共有するようにしています。

吉本:なるほど。気になったことをみんなに共有するということをしているんですね。

順子先生:はい。個人的に質問してくださったことも、私がすぐその場で答えられたら良いんですが、答えられないこともありますから、調べたり分かりやすい動画を見つけて、グループチャットでみなさんと共有するようにしています。

吉本:学習をしたことの積み上げが、どんどん蓄積されていく環境が出来ているのですね。

順子先生:はい、そうです。

吉本:今日は長い間インタビューのお時間いただきましてありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。

順子先生:ありがとうございました。よろしくお願いします。

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活山順子先生
看護師
2023年〜日本語教師として介護士育成に携わる。

略歴
医療技術短期大学看護学科卒業。慢性期病棟、外来、診療所での勤務を経て海外の日本語学校で勤務、帰国後訪問入浴サービス会社に非常勤看護師として勤務。2018年にミャンマーで日本語学校の講師を務める。

吉本さん

吉本政生
2023年7月から株式会社スタッフプラス執行役員COOとして活動中。

略歴
DMMグループ創業メンバー
出版社の代表取締役・同グループマーケティング責任者。その後2015年から同社とコンサルタント契約締結後・同社内の新規事業開発責任者、海外法人の子会社代表、国際営業部部長、同社内既存事業コンサルタント兼務。

2022年から介護事業所向けのサービス提供事業会社にEC部門の責任者として入社。
福岡市「令和4年度 介護事務効率化支援事業」を受託実施。


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