外国人雇用に関わっている方であれば聞き慣れた用語ともいえる「脱退一時金」ですが、一般的にはあまり聞き慣れない言葉なのではないかと思います。今回は、この「脱退一時金」についてご説明していきたいと思います。
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脱退一時金とは?
脱退一時金
脱退一時金とは、厚生年金保険等の年金保険から脱退した際に支給される一時金のことをいいます。
日本国籍を有しない方が、国民年金、厚生年金保険(共済組合等を含む)の被保険者(組合員等)資格を喪失して日本を出国した場合、日本に住所を有しなくなった日から2年以内に脱退一時金を請求することができます。
日本で働く外国人にとっては「年金」という用語で知られた手続だと思います。
一般的に働く外国人が加入することが多い厚生年金保険の脱退一時金は、好青年基本保険法附則29条で定められています。
脱退一時金の対象となる方
外国人が帰国する際等、要件を満たす場合には厚生年金保険の脱退一時金を申請することが可能です。申請が可能な方は、以下の要件を満たす方です。
- 日本国籍を有していない
- 公的年金制度(厚生年金保険または国民年金)の被保険者でない
- 厚生年金保険(共済組合等を含む)の加入期間の合計が6月以上ある
- 老齢年金の受給資格期間(10年間)を満たしていない
- 障害厚生年金(障害手当金を含む)などの年金を受ける権利を有したことがない
- 日本国内に住所を有していない
- 最後に公的年金制度の被保険者資格を喪失した日から2年以上経過していない
脱退一時金の申請手続
脱退一時金の申請手続は、次の必要書類を年金機構に郵送する方法か、電子申請により行います。
必要書類は次のとおりです。
- 脱退一時金申請書
- パスポートの写し
- 日本国内に住所を有しないことが確認できる書類(住民票の除票の写しやパスポートの出国日が確認できるページの写し等)
- 受取先金融機関名、支店名、支店の所在地、口座番号、請求者本人の口座名義であることを確認できる書類
(金融機関が発行した証明書等。または請求書の「銀行の証明」欄に銀行の証明でも可)
- 基礎年金番号通知書または年金手帳等の基礎年金番号を明らかにすることができる書類
- 代理人が請求手続きを行う場合は「委任状」
脱退一時金の申請を行ってから約3から4か月後に還付の手続が開始され、記載した口座に直接脱退一時金が送金されます。
脱退一時金を申請する際の注意点
厚生年金保険等の年金保険の加入期間が10年間ある場合、将来、日本で老齢年金を受給する資格を得ます。他方で、脱退一時金の支給を受けてしまった場合、年金の加入期間がなくなってしまい、将来年金を受給しようと考えた場合、別途10年の年金保険の加入期間が必要となります。
そのため、脱退一時金を申請するかは、今後の外国人のキャリア、特に日本でどの程度在留するかによって選択肢が異なり得ます。外国人のキャリアの希望を聞いた上で手続を案内するのが望ましいといえます。
退職所得の選択課税による還付のための申告とは
脱退一時金は、住所を失った後に支払われるため、支払いの時点では非居住者に該当するのが一般的です。所得税法上、非居住者、非永住者そして永住者が区分されています。
非居住者 |
居住者 |
【所得税法2条1項5号】 居住者以外の個人をいう。 |
【所得税法2条1項3号】 国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人をいう。 |
非永住者 |
永住者 |
【所得税法2条1項4号】 居住者のうち、日本の国籍を有しておらず、かつ、過去10年以内において国内に住所又は居所を有していた期間の合計が5年以下である個人をいう。 |
非永住者以外の居住者 |
非居住者、非永住者そして永住者について課税関係が異なり、非居住者については、国内源泉所得については源泉徴収がなされるという課税制度がとられています。
非居住者 |
居住者 |
【所得税法164条1項2号、2項2号、161条1項12号】 国内源泉所得に対する源泉分離課税 |
非永住者 |
永住者 |
国外源泉所得以外の所得及び国内源泉所得で日本国内において支払われ、または国外から送金されたものに対する総合課税 |
国内および国外において生じたすべての所得に対する総合課税 |
非居住者については、国内源泉所得に対して20.42%の源泉徴収がなされますが、この国内源泉所得には一定の給与、報酬または年金が含まれます(所得税法161条1項12号)。
そして、非居住者の方が支給を受ける厚生年金保険の脱退一時金はこの国内源泉所得に該当し、その支給の際に、20.42%の税金が源泉徴収されます。
この源泉徴収部分については「退職所得の選択課税による還付のための申告」を行うことで還付を受けることができる場合が多いです。特に、脱退一時金の申請とともにあわせて弁護士・社労士兼税理士等に依頼した場合、脱退一時金の結果の通知を納税管理人たる弁護士・社会保険労務士兼税理士に年金機構から直接送付してもらうことができる場合もあり、手続としての負担を軽減することが可能ですので、脱退一時金の申請の際には職所得の選択課税による還付のための申告手続まで考慮に入れて手続を行うのが望ましいといえます。