介護の特定技能外国人は、受け入れ可能施設が定められており、どの事業所でも雇用できるわけではありません。本記事では、受け入れ可能施設をすべて紹介し、特定技能外国人の概要と、受け入れに必要な要件を説明します。
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受け入れ可能な介護施設とは
受入れが可能な介護施設とは、介護福祉士の受験資格要件において実務経験と認められる施設のうち、現行制度で存在するものと定められています。基本的に「技能実習制度」と同様の事業所が対象です。特定技能外国人の受け入れ可能施設を下の表ですべて紹介していますので、法人内のどの施設なら受け入れが可能か、判断材料のひとつにしてください。
受け入れ可能な対象施設一覧
受け入れ可能な介護施設一覧の完全版です。厚生労働省の表をもとに、事業別で表に示したので、自施設が対象かどうか確認してください。
児童福祉法関係の施設・事業
対象 |
対象外または現行制度において存在しない |
- 肢体不自由児施設又は重症心身障害児施設の委託を受けた指定医療機関(国立高度専門医療研究センター及び独立行政法人国立病院機構の設置する医療機関であって厚生労働大臣の指定するもの)
- 児童発達支援
- 放課後等デイサービス
- 障害児入所施設
- 児童発達支援センター
- 保育所等訪問支援
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- 知的障害児施設
- 自閉症児施設
- 知的障害児通園施設
- 盲児施設
- ろうあ児施設
- 難聴幼児通園施設
- 肢体不自由児施設
- 肢体不自由児通園施設
- 肢体不自由児療護施設
- 重症心身障害児施設
- 重症心身障害児(者)通園事業
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障害者総合支援法関係の施設・事業
対象 |
対象外または現行制度において存在しない |
- 短期入所
- 障害者支援施設
- 療養介護
- 生活介護
- 共同生活援助(グループホーム)
- 自立訓練
- 就労移行支援
- 就労継続支援
- 福祉ホーム
- 日中一時支援
- 地域活動支援センター
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- 障害者デイサービス事業(平成18年9月までの事業)
- 児童デイサービス
- 共同生活介護(ケアホーム)
- 知的障害者援護施設(知的障害者更生施設・知的障害者授産施設・知的障害者通勤寮・知的障害者福祉工場)
- 身体障害者更生援護施設(身体障害者更生施設・身体障害者療養施設・身体障害者授産施設・身体障害者福祉工場)
- 身体障害者自立支援
- 生活サポート
- 経過的デイサービス事業
- 訪問入浴サービス
- 精神障害者社会復帰施設(精神障害者生活訓練施設・精神障害者授産施設・精神障害者福祉工場)
- 在宅重度障害者通所援護事業(日本身体障害者団体連合会から助成を受けている期間に限る)
- 知的障害者通所援護事業(全日本手をつなぐ育成会から助成を受けている期間に限る)
- 居宅介護
- 重度訪問介護
- 行動援護
- 同行援護
- 外出介護(平成18年9月までの事業)
- 移動支援事業
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老人福祉法・介護保険法関係の施設・事業
対象 |
対象外または現行制度において存在しない |
- 第1号通所事業
- 老人デイサービスセンター
- 指定通所介護(指定療養通所介護を含む)
- 指定地域密着型通所介護
- 指定介護予防通所介護
- 指定認知症対応型通所介護
- 指定介護予防認知症対応型通所介護
- 老人短期入所施設
- 指定短期入所生活介護
- 指定介護予防短期入所生活介護
- 特別養護老人ホーム(指定介護老人福祉施設)
- 指定認知症対応型共同生活介護
- 指定介護予防認知症対応型共同生活介護
- 介護老人保健施設
- 指定通所リハビリテーション
- 指定介護予防通所リハビリテーション
- 指定短期入所療養介護
- 指定介護予防短期入所療養介護
- 指定特定施設入居者生活介護
- 指定介護予防特定施設入居者生活介護
- 指定地域密着型特定施設入居者生活介護
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- 指定訪問入浴介護
- 指定介護予防訪問入浴介護
- サービス付き高齢者向け住宅
- 第1号訪問事業
- 指定訪問介護
- 指定介護予防訪問介護
- 指定夜間対応型訪問介護
- 指定定期巡回・随時対応型訪問介護看護
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一部対象 |
- 養護老人ホーム※1
- 軽費老人ホーム※1
- ケアハウス※1
- 有料老人ホーム※1
- 指定小規模多機能型居宅介護※2
- 指定介護予防小規模多機能型居宅介護※2
- 指定複合型サービス※2
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※1 特定施設入居者生活介護(外部サービス利用型特定施設入居者生活介護を除く)、介護予防特定施設入居者生活介護(外部サービス利用型介護予防特定施設入居者生活介護を除く)、地域密着型特定施設入居者生活介護(外部サービス利用型地域密着型特定施設入居者生活介護を除く)を行う施設を対象とする
※2 訪問系サービスに従事することは除く
※3 有料老人ホームに該当する場合は、有料老人ホームとして要件を満たす施設を対象とする
生活保護法関連の施設
その他の社会福祉施設等
対象 |
対象外または現行制度において存在しない |
- 地域福祉センター
- 隣保館デイサービス事業
- 独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園
- ハンセン病療養所
- 原子爆弾被爆者養護ホーム
- 原子爆弾被爆者デイサービス事業
- 原子爆弾被爆者ショートステイ事業
- 労災特別介護施設
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- 原爆被爆者家庭奉仕員派遣事業
- 家政婦紹介所(個人の家庭において介護等の業務を行う場合に限る)
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病院又は診療所
特定技能外国人は、どんな施設でも受け入れができるわけではありません。施設の分類によって、対象となるかどうかが決まります。法人の形態が問われることはありませんが、同一法人でも施設の形態によって受け入れ可否が異なるため、上の表で確認してみましょう。
出典:厚生労働省「介護分野の1号特定技能外国人を受け入れる対象施設について」
受入れに必要な要件
特定技能外国人を雇用する企業側には、受け入れのために必要な要件が省令などで定められています。
受入れ機関の基準 |
- 外国人と結ぶ雇用契約が適切であること
- 特定技能外国人の報酬の額や労働時間が日本人と同等以上など
- 受入れ機関自体が適切であること
- 法令等を遵守し「禁錮以上の刑に処せられた者」等の欠格事由に該当しないこと
- 保証金の徴収や違約金契約を締結していないことなど
- 外国人を支援する体制があること
- 外国人を支援する計画が適切であること
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受入れ機関の義務 |
- 外国人と結んだ雇用契約を確実に履行すること
- 外国人への支援を適切に実施すること
- 出入国在留管理庁及びハローワークへの各種届出
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介護分野特有の条件 |
- 厚労省が組織する協議会に参加し、必要な協力を行うこと
- 厚労省が行う調査又は指導に対し、必要な協力を行うこと
- 事業所単位での受入れ人数枠の設定
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出典:出入国在留管理庁「特定技能ガイドブック」
受け入れ側の条件は、特定技能外国人側よりも多く、厳しいものになっています。すべての基準や条件をしっかり押さえておかないと、受け入れ自体ができない可能性があります。また、受入れ機関の義務に違反すると、罰則を受ける可能性があるため、注意が必要です。
介護分野特有の条件としては、特定技能外国人は入職後4ヵ月以内に「特定技能協議会」への加入が必要です。加入申請のために必要な書類は以下のとおりです。
- 雇用条件書(別紙「賃金の支払」を含む。)(参考様式第1-6号)
- 1号特定技能外国人支援計画書(参考様式第1-17号)
- 介護分野における業務を行わせる事業所の概要書(介護参考様式第1-2号)
- 日本語能力水準を証明する書類(介護日本語評価試験・日本語能力試験等の合格証明書、介護福祉士国家試験結果通知書、技能実習評価試験の合格証明書等)
- 技能水準を証明する書類(介護技能評価試験の合格証明書、介護福祉士国家試験結果通知書、技能実習評価試験の合格証明書等)
- 在留カード
注意点
特定技能外国人の注意点としては、訪問系の事業所はすべて対象外になっているところです。訪問介護だけでなく、住宅型有料老人ホームも訪問系とみなされるため、特定技能の受入れはできません。サービス付高齢者住宅は基本的に対象外ですが、特定施設であれば対象となります。
受入れ人数に制限があるのも、介護分野特有の要件となっています。常勤介護職員の総数を超えない範囲での受入れしかできないため、複数の外国人受入れを検討している場合は注意が必要です。
雇用形態はフルタイムの直接雇用のみと指定されており、待遇は日本人と同等以上と定められています。仕事の内容も日本人介護職員と同様のものが求められ、身体介護を主な業務として従事できます。服薬介助や夜勤勤務も、業務の習熟度が上がれば可能となります。
介護業界における特定技能外国人の現状
特定技能の制度は2019年4月に始まり、人手不足が深刻な12の業種が選ばれています。介護業界は今後ますます人材不足が進むことが予想されるため、特定技能の制度が導入されました。
特定技能制度の在留資格は、1号と2号の2種類がありますが、介護業界では特定技能1号のみ認められています。特定技能1号は最長で5年間の就労が認められていますが、その間に介護福祉士の国家資格を取得すると、在留資格「介護」への切り替えが可能になります。在留資格「介護」では、在留資格更新の必要はあるものの在留期間の制限がなくなるので、日本で期間の上限なく就労が可能になるのです。
下の表は、日本国内における外国人労働者の内訳と推移を示しています。特定技能外国人は、下の表では「②就労目的で在留が認められるもの(いわゆる専門的・技術的分野)」に該当します。人数が毎年徐々に増えていると同時に、全体における割合も少しずつ上昇していることが見てとれます。
特定技能外国人を雇用するには
特定技能外国人を雇用するには、外国人専門の求人メディアへの掲載や、人材会社への依頼が近道でしょう。登録支援機関を運営しているところへ依頼すると、人材の紹介に対して一貫したサポートが期待できます。
特定技能外国人に対する支援義務事項
国定技能外国人を雇用するときは、日本での生活をスムーズにするために10項目の就労・生活支援をおこなうように定められています。特徴は、採用するときの支援にとどまらず、就労している間の継続的な支援が求められているところです。
これにともなう業務量を実務レベルに落とし込むと、1名の特定技能外国人を採用すると、専任の担当者が必要となることが見込まれます。登録支援機関へ業務委託することで、担当者を配置するコストが削減できるため、結果的に負担軽減につながります。
- 事前ガイダンス
- 出入国する際の送迎
- 住居確保・生活に必要な契約支援
- 生活オリエンテーション
- 公的手続き等への同行
- 日本語学習の機会の提供
- 相談・苦情への対応
- 日本人との交流促進
- 転職支援(人員整理等の場合)
- 定期的な面談・行政機関への通報
支援は委託も可能
特定技能外国人への支援は、登録支援機関へ委託することが可能です。上記の就労・生活支援を自社でおこなうには、専任担当者の配置などを検討する必要があります。
公益社団法人国際厚生事業団のおこなった調査では、登録支援制度全体の課題として「手続きが煩雑」という回答が圧倒的に多くなっています。そのため、多くの介護事業所では、登録支援機関への委託が一般的です。
登録支援機関は、外国人材の受入れに関する支援を受け入れ機関からの支援委託契約によっておこなう機関です。登録支援機関として登録を受けている団体は、人材紹介会社や社会保険労務士など、人材雇用や労務のスペシャリストが多くみられます。
外国人雇用においては、幅広い範囲での手続きや書類提出が必要となるため、一般の事業者が全てを自社で担うのは負担が大きいでしょう。日本人を雇用するための労務管理とは違い、出入国や滞在に関する法令にも精通する必要があるからです。そのような複雑な手続きを、実務をおこないながら兼任で担当することは、あまり現実的ではないといえます。
とはいえ社内で専任の担当者を配置すると、それだけのコストが発生します。採用する人数によっては、幅広い業務範囲と複雑な制度のために、複数の専任担当者が必要になる場合もあるかもしれません。それを考えると、あらかじめ専門家である登録支援機関に業務委託することが一般的といえます。
特定技能外国人の積極的な受け入れがおすすめ
特定技能の制度は、外国人が日本で介護職員として就労できる在留資格です。技能実習やEPAなど、ほかの在留資格があるなかで、介護職員の就労を目的とするところが特徴といえます。
今後ますます人員不足が深刻化する介護業界において、外国人雇用は人材確保に有効といえます。実際に外国人を雇用している介護事業者は、厚生労働省の調査で「外国人への教育を通じて、介護サービスの質の見直しにつながった」と肯定的な回答をしています。ほかの在留資格と比較しても制限の少ない特定技能制度は、介護業界の人員確保の切り札となりえるため、積極的な受け入れを検討するとよいでしょう。