お客様の声:大野浦病院様
広島県廿日市市で病院(回復期リハビリテーション病床、療養病床)と複数の介護施設を運営されている医療法人社団明和会様。特定技能外国人の採用においてスタッフプラスをお選びいただきました。
大野浦病院の会長室室長(働き方改革推進担当)と介護係長に、外国人スタッフ採用についての考え方や活躍ぶりについてお話を伺いました。
外国人採用についての考え方
外国人採用を進めた背景や経緯を教えてください
松原様:最初は技能実習生の1期生と2期生を採用していました。しかし、
・技能実習は技能移転という目的があり、本人たちも正雇用の社員じゃないという感覚があった
・常勤の社員であれば人事考課制度を用いて評価を行い、お給料が上がったり役割が変わっていくのですが、技能実習生だと適応できない部分がありました。
・周囲の日本人スタッフが「実習生だからこれくらいでいいのでは?」というラインを引いてしまうことがあった
こういったことから、技能実習生ですとモチベーションが上がりにくい部分があるのではないか、という課題がありました。
特定技能は日本人と同じ待遇・同じ仕事内容となり、人事考課制度を適応することができますので、頑張りがしっかり評価できる・本人もモチベーションが上がる・責任感を持って働けるようになる、と考えましたので特定技能の採用に切り替えていきました。
外国人雇用を開始したことで、新しい発見や良い影響などはありましたか?
松原様:教育制度が整ったことは良かったことです。外国人スタッフ向けに特別に作ったわけではないのですが、丁寧に細かくステップ分けを行ったので、「日本人で初めて介護をするスタッフ」でも運用しやすい教育制度となりました。
新しい発見としては、自分たちを客観視するきっかけをもらったことです。
技能実習生を受け入れた際ですが、現場に出た職員たちから、「私たちは丁寧な言葉を習ってきました。でも先輩たちは違います。良いんですか?」と指摘されたことがありました。
海外現地の学習では「日本人はすごく礼節を重んじるし、丁寧に接遇をする」と習っていたのに、いざ日本に来て現場に出たら日本人先輩スタッフの言葉遣いがフレンドリーだったことに疑問がわいたようです。
これを聞いた日本人スタッフは皆、とても衝撃を受けたようで客観的に「自分たちの言葉遣いは本当にこれでよいのだろうか?」と振り返って考える本当に良いきっかけになりました。
あとは言葉の問題でまだ十分に思いを伝えられないことがあり、ジェスチャーをしたりいろいろな非言語の手段で思いを一生懸命に伝えているのですが、その内容がわかった患者さんは普段見せないような笑顔になったりと、すごく良い刺激になっています。
外国人スタッフ受け入れにあたり、取り組んだことについて教えてください
日本人スタッフ向けオリエンテーション
松原様:海外に行ったことがあるか?・実際に外国人と触れ合ったり、一緒にお仕事をしたことがあるか?という質問をスタッフに投げかけたところ、かなり人数が少ないことがわかりました。
ですので、海外の文化への理解を深めてもらうために、入国してくる方たちの母国の文化などを学べる場を何度も作りました。国を紹介するプレゼンテーションを用意したり、母国のお菓子とか飲み物を用意したりもしました。
現場リーダーのスタッフには海外現地まで行って、その国を体験してもらうことも過去に実施しています。
母国の食事の提供
松原様:患者さんに提供するお食事に関しても、外国人スタッフの母国の料理を日本風の味付けにして取り入れてもらうようにしています。食べ物の話題は患者さんとスタッフ・スタッフ同士でも盛り上がりやすいです。
入社式
松原様:入社式・オリエンテーションについては日本人と同様に行っています。入国直後なので、多少の配慮はありますが、「あなたたちは1職員として当法人で働くのですよ」、という区切りをしっかりつけてあげることが大事だと思います。
ジョブローテーション
松原様:配属前に2か月間のジョブローテーションを実施しています。法人内にある主要なサービスの内容を知ってもらうことと、まだ十分に日本語コミュニケーションが取れない中でも、2週間くらい働いてみると現場にフィットするかどうかが感覚的にわかるようになるので、配属を決める際にすごく参考になります。
大体主要な部門を回るので、法人内の大勢の日本人スタッフに一通り挨拶もできます。そうすると、ほとんどのスタッフと顔見知りになりますので、お互いに声もかけやすく、すごく働きやすくなると思っています。
登録支援機関へ求めることは何でしょうか?
松原様:私たちと登録支援機関でお互いに「どういう指導をしたか・フォローをしたか・こういうことが良かったか」というような内容が、一元的に管理できるものがあるとよいと思います。何かあったときに同じことが続いているなとか、成長したな、という事がお互いに共有できるイメージです。
今まで雇用してきた中で、一番困ったこと(直近困ったことなど)
松原様:採用面接の時点では、「日本に行って介護の勉強をしたい」「介護福祉士を取りたい」という強い思いを聞かせていただくことがありますが、実際日本に来て一緒に働いてみると、「あれ?思っていた感じと違って積極性があまりないな。」と思うようなことがあります。
その点、よくよく話を聞いてみると「介護は困ったときにお世話をするだけでよいと思っていた」という事で、実際現場に出てみて「困っています」と患者さんや利用者さんが言うわけではなくて、自分たちが進んで動いていかなくてはいけない、また、自分から学びに行かなくてはいけないというところにすごいギャップを感じたのだと思います。
自分の思っている介護ではなく、「目の前で求められている日本の介護を学びたいな」と考えを切り替えられるとよいのですが、切り替えられないと働き続けるのは難しいかもしれません。
看護師さんでも、リハビリでも学校ではとてもきれいな形のものを学んできますが、現場に入ってみると実は違った、というギャップがあります。ですので、それが海外で介護がまだ浸透していない国だった場合にはどうしても想像とのギャップが生まれるので、いかにこのギャップを埋めていくのかはよく考えないといけません。
特定技能外国人スタッフの周囲の反応や指導について
技能実習と特定技能の人材を比較した際の違いはどんな部分でしょうか?
野地様:特定技能の方は基本的な日本語であったり、介護技術を学ばれているという点が大きく差があると思っています。技能実習の方は来日してから基礎を学ぶという流れですが、特定技能の方はすでに基礎を学ばれているので、仕事の入り方のスピード感に違いを感じます。
患者様やご家族様からの評判や反応などはいかがでしたでしょうか?
野地様:ご家族様に関しては、最初は日本人スタッフにわざわざ確認をとるような形で、「●●伝えてもいいですか?」というような反応でした。その後、「どんどん話して頂いて大丈夫です」とお伝えして話していただいたら、「こんなに話ができるとは思っていなかった!入社して何か月なの?」というような話にもなり、とても驚かれていたのが印象的です。実際に話していたのは入社1-2か月目の特定技能スタッフだったのですが、ご家族も、患者さんも驚くぐらいコミュニケーションがとれています。
現在働いている特定技能外国人スタッフの業務状況(習熟度)について教えてください。
野地様:当院では入職から1年を目安に介護プログラムを用いて介護教育を行い、その後に夜勤に入るイメージです。
入職から1年半たったリナさんは夜勤に入り始めており、これから受け持ち患者さんを持つという段階に来ています。また、入職当初は無かった「業務についての提案」ができるようになったり成長している印象です。
指導する際に注意していることと今後の課題について教えてください。
野地様:外国人スタッフを指導する際には必ず復唱をしてもらう事、意味も説明してもらうルールにしています。伝えたいことが確実に伝わっているかを確認することを大事にしています。
課題としては、やはり日本語能力だと思います。日本語能力が高ければよりコミュニケーションが取りやすくなり、気付きや提案につながると思います。聞き取り能力も上がれば、できることの幅がもっと広がってくると思います。
インタビュー
仕事で工夫していることはありますか?
仕事をするときはノートに記録することが大事だと思います。最初はあまり言葉もわかりませんから、後でもう1回先輩や周りの方にも聞いて確認しています。どういう言葉の使い方をするかも確認しています。
日本語は、現在はどの様に勉強していますか?
日本語の教科書やYoutubeを見て勉強しています。今年日本語能力試験N3を取りましたので、来年はN2取得を目指したいです。
地域特有の方言などで困ることはありますか?
(入職から1年半経っていますが)まだ困ることはあります。でもよく聞けば聞くほどわかるような気がします。最初は難しいですが。
もし知らない方言だなと思ったときは、最初は雰囲気や状態を考えて、本人に確認してみます。それでもわからなかったらほかの職員に聞くようにしています。
今後の目標について教えてください。
私の短期的な目標は担当患者さんの業務を覚えることです。長期的な目標はビザを延長できるように介護福祉士の資格を取ることと、日本語がうまくなること、あとは英語も勉強したいです。
お仕事のイメージとのギャップはありましたか?
インドネシアでは丁寧な日本語を学んで来ましたが、インドネシアで勉強していない言葉を聞くことがあります。後は方言ですね。今は結構たくさんの方言を覚えました。声掛けをするときには私も方言をよく使います。
日本語は、どの様に勉強していますか?
映画やアニメを見たりして勉強しています。分からないことがあったら、夜仕事から帰った後にyoutubeとかで調べて、次の日にほかのスタッフや患者さんに使い方があっているかを確かめたりしています。今は日本語能力試験のN3の勉強をしています。
仕事をする上で工夫していることはありますか?
私は「確認すること」を一番に気を付けています。何かやりたいとき、わからないときは必ず先輩や周りの人に確認して、できるかどうかOKをもらってからやります。
時間の使い方にも気を付けています。リハビリの予定や、看護師さんの予定もありますからもし何かが間に合わなくなりそうなら、一緒に相談してどうすればいいかを確認しています。
特定技能外国人雇用を検討中の採用担当者へのメッセージ
初めて外国人スタッフを受け入れる施設で、気をつけるべきポイントはありますか?
松原様:金銭的な費用と受け入れるスタッフの労力は必ずかかる、というところですかね。最初は覚悟がいると思います。
あとはあまり過度に期待し過ぎても良くないと思います。もちろん母国で日本語や介護の勉強をされていますが、経験がない方が医療・介護の業界に入るというのは独特なところもあり、驚くことがあったりすると思います。大らかに受け止めることができるとよいと思います。
時間に関しても、日本に来た当初は皆さん「時間を守る」と習ってきていますが、できていない時もあります。やはり生まれて20年近く違う文化で暮らしてきたものが、ガラッとすぐに変わるかというと難しいので、5分前行動するにはどうしたらよいのかなど、一緒に考えたりできるとよいと思います。
採用検討中の方にメッセージをお願いします。
松原様:外国人スタッフだけでなくいろいろな方と働くときに気を付けているのは、「特別扱いはしない」という事です。一定の配慮はもちろん必要な場面はありますが、「外国人だからまだ難しいよね」とか「ちょっとステップを小さくしよう」というような遠慮は必要ないと思っています。日本に明確な目的をもってやってきて、技術や日本語力を獲得しようとしている方たちですから、今できることからちょっと背伸びをして力をつけるような環境を提供することが大事だと思います。
【法人プロフィール】
医療法人社団明和会
事業所:
■病院
大野浦病院
■通所・関連施設
居宅介護支援事業所
訪問看護ステーションさくら
通所リハビリテーション
通所介護
認知症対応型共同生活介護:ラ・メール大野
サービス付き高齢者向け住宅:さくらす大野
【話者プロフィール】
会長室 働き方改革推進 広報担当 室長 松原様
介護係長(外国人介護士の統括リーダー) 野地様
特定技能 リナさん・タヨさん