介護分野の外国人雇用にも、一定の気をつけなければならない法的なリスクがあります。
ここでは、介護分野の外国人雇用において気をつけておくべきリスク及びその対応について不法就労に関するリスクを中心に見て行きたいと思います。
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不法就労のリスク
外国人雇用における中核的なリスクは、不法就労助長罪(入管法73条の2第1項)に該当することです。不法就労助長罪に該当した場合、不法就労助長罪が成立してしまうと、刑罰が課せられるだけではなく、技能実習生や特定技能外国人の受入れもできなかうなってしまいます。具体的には、技能実習制度では実習実施者において不法就労助長罪が成立するのは技能実習計画の取消事由であり(技能実習法16条1項3号、同法10条2号)、特定技能制度では特定技能所属機関に不法就労助長罪が成立することは特定技能所属機関の欠格事由に該当します(特定技能基準省令2条1項4号ロ(5))。
このように、「不法就労」は、介護分野で外国人雇用を行う上でも中核的なリスクとして存在します。
関連記事:外国人採用のトラブル事例!初めての特定技能介護人材で気を付けるポイント
不法就労の傾向
では、不法就労の件数というのはどの程度あるのでしょうか。以下の表は出入国在留管理庁「令和3年における入管法違反事件について」に記載されている不法就労者数の部分を抜き出したものです。これを見ると、毎年10,000人以上が確認される状況が続いており、比較的発生しやすい類型になってことがわかります。
|
平成30年 |
令和元年 |
令和2年 |
令和3年 |
不法就労者数 |
10,086人 |
12,816人 |
10,993人 |
13,255人 |
不法就労における罰則
不法就労については、外国人側と雇用等する企業側の双方に刑罰が定められています。
(1)外国人について
外国人側については、不法就労の程度によって3年以下の懲役、禁固もしくは300万円以下の罰金か、1年以下の懲役、禁固もしくは200万円以下の罰金が科せられます。
(2)企業側について
企業側については、「事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者」等に該当する場合、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金が科せられます(入管法73条の2第1項)。
不法就労活動及びその類型
では、どういった場合が不法就労になるのでしょうか。表にまとめると、次のように2つの類型にまとめることができます。
- [類型1]
- 入管法19条1項に反する活動
(在留資格の範囲外の就労)
- [類型2]
- 入管法70条1項1号等に反する者が行う報酬その他収入を伴う活動
(一定の在留資格を有しない者が行う就労)
そして、不法就労活動を行うようになったタイミングに応じて、次のようにさらに分類することが可能です。
[類型1] 入管法19条1項に反する活動(在留資格の範囲外の就労) |
就労内容が在留資格に一致しない |
・技人国の外国人が専ら現業職で就労 |
資格外活動の条件に違反する |
・退学した留学生が就労 ・留学生が週28時間を超えて就労 |
[類型2] 入管法70条1項1号等に反する者が行う報酬その他収入を伴う活動 (一定の在留資格を有しない者が行う就労) |
就労の当初から在留資格を有しない |
オーバーステイの外国人を雇用/委託 |
就労の途中から在留資格を有しなくなった |
雇用/委託した外国人がオーバーステイになる |
関連記事:介護の特定技能外国人受入れにおける法令違反のリスク、欠格事由について
不法就労助長罪を防ぐために
現在の実務では、この類型1及び類型2の形態での不法就労助長罪の発生を防ぐため、雇入時及び雇用中における在留管理体制を構築する企業が増えています。
このような在留管理体制を構築するにあたり、まずとられるのはリスクベースのアプローチです。
不法就労助長罪が事業上リスクになるかについては、①不法就労助長罪が発生した場合に影響が大きいか(取消しの対象となる許認可事業を営んでいるか)、技能実習生・特定技能外国人の雇用を行っているか、②不法就労助長罪が発生しやすいか、③その他の場合かというリスクの大きさと発生可能性という2つの観点から当該事業における不法就労助長罪のリスクの大きさを検討します。
②の不法就労助長罪が発生しやすいかについては、以下のマトリックスで整理することが多いように思います。
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越境型 |
国内型 |
高度人材 |
リスク中 |
リスク中 |
現業性人材 |
リスク低 |
リスク高 |
介護分野では、技能実習生や特定技能外国人を受け入れるケースが多いと思います。この類型は、現業性人材を越境型で受入れること類型に該当します。
そして、現業性人材を越境型で受け入れる場合は、不法就労に該当するリスクというのは、他の類型と比較すると、実は少ないといえます。
これは、在留資格認定証明書交付申請段階から監理団体等が関与し、その後も継続して監理・支援を行う結果、不正な手段での在留資格の取得やオーバーステイの発生といった可能性が低いためです。
反対に、国内において資格外活動の許可や就労制限がない在留資格で現業性の仕事を行う人材を募集する場合は最もリスクが高い類型であるといえます。これは、この類型のパターンは、オーバーステイを行った方が偽造在留カードを入手し仕事を得るというパターンで生じやすく、また、外国人側も生活の糧を得るために仕方なく行うという側面もあり、一定数の発生がある一方、適切な体制を構築していなければ雇入れ等を防止することができないためです。
例えば、リスクが高く難易度が高いのは、「留学」の在留資格の方のアルバイトです。労働時間が原則週28時間に制限されており、28時間を守るようにシフトを組むといった管理が難しいためです。介護分野でも、介護福祉士養成校で留学中の方をアルバイトとして雇用するパターンがあると思います。そういった場合は、実は、難易度が高い採用類型であることを意識して管理体制を作るようにしましょう。