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育成就労制度とは?技能実習の廃止と特定技能の未来

2024126日に公表された「外国人雇用状況の届出状況のまとめ」によれば、202310月末の届出対象となっている外国人の数は約204万人となっています。2022年末時点では182万人であり、1年で22万人増加したといえます。

 22万人という規模を把握するために比較すると、22万人の人口の市としては群馬県太田市や佐賀県佐賀市等があります。

 このように、日本で働く外国人は年に市1つの規模で増加するようになっているが、その原動力となっているのが技能実習制度及び特定技能制度です。

 このように活用が促進されている「技能実習制度」・「特定技能制度」について、次のように制度見直しが進行中です。

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 制度見直しの進行

(1) 制度見直しにかかる有識者会議について

 2022年12月から技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議が開催され、2023年11月24日まで合計16回の会議が行われ、同年11月30日に「最終報告書」が公表されました。

(2) 与党提言

 有識者会議の最終報告書に続き、与党である自民党及び公明党から、それぞれ2023年12月14日及び同年同月21日に提言がなされています。

(3) 政府方針

 これらの最終報告書及び与党提言を踏まえて、2024年2月9日に開催された第17回「外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議」において、「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議最終報告書を踏まえた政府の対応について」が決定され、いわゆる政府方針が決定されました。

(4) 法案の国会への提出

 かかる政府方針のもと、2024年3月15日に閣議決定がなされ、技能実習法等を改正する法案(育成就労法法案)が国会に提出されました。

ア 技能実習法等を改正する法案(育成就労法法案)の特徴

 国会に提出された育成就労法の法案が示す「育成就労制度」の特徴は①段階的な日本語能力の習得、②職種、③転籍の3点に特徴があるといえます。

イ ポイント1 段階的な日本語能力の習得

 新たな制度である「育成就労」では、就労開始前、特定技能1号移行時、特定技能2号移行時に、それぞれ一定の日本語能力がなければ就労開始ないし移行ができない制度となることが検討されています。

 各段階で必要とされる日本語能力及び技能水準をまとめると次のとおりです。

 このような段階的な日本語能力の習得が制度化されることで、より日本語教育の充実化が図られるものといえます。また、技能に関する段階的な修得についてもこれまでと同水準の技能の修得が必要となります。なお、制度が育成就労制度になることにより、「技能実習評価試験」は「育成就労評価試験」に名称を変更し、存続する予定となっています。

ウ ポイント2 職種

 新たな制度である「育成就労」では、対象となる職種の考え方がこれまでの技能実習制度における「職種・作業」の考え方から特定技能制度の考え方である「産業分野・業務区分」の考え方に統一されます。

 そして「育成就労」では、特定技能制度の考え方にあわせ「産業分野・業務区分」の考え方を採用し、特定技能制度の中でさらに「育成就労産業分野」が定められ、当該「育成就労産業分野」において育成就労が可能となる制度となる見込です。

エ ポイント3 転籍

 続いて、新たな制度である「育成就労」では、①やむを得ない場合の転籍の明確化・円滑化と②一定の本人の意向による転籍を認めることが検討されています。

 「やむを得ない場合」については、労働条件の相違によっても転籍を認めるよう柔軟化が指向されており、これまでより、より丁寧な労働条件通知を行う等「聞いた話と違う」といった事態が生じないように労働条件の説明を行う必要性が高まることが予想されます。

 また「本人意向」による転籍については、送出機関のビジネスモデルを変化させる可能性があります。すなわち、送出機関はこれまで技能実習生を送り出した後、毎月5,000円から10,000円の送出管理費を受領してきました。しかし、本人意向の転籍が認められ、かつ、転籍に送出機関の契約が紐付かない場合、送出機関は1年を超える部分の送出管理費を収受することは困難となります。

 このような変化は、1年目の送出管理費を高くする傾斜型の送出管理費や入国時の一括徴収型の送出管理費を導入する可能性を高め、結果として受入企業の負担が増加する可能性があります。

(5) 経過措置について

 法の附則によれば、育成就労制度が施行されるのは法の公布後3年以内となっているため、2027年に施行される可能性が高いと思われます。

また、施行されるまでの間の技能実習制度からの経過措置ですが、育成就労制度が開始されるまでに入国した技能実習生は、原則として技能実習2号が終わるまで在留できることが検討されています。

そのため、2027年4月1日から育成就労制度が開始されるとした場合、2027年3月に入国した技能実習生は2030年まで技能実習を行うことができることになります。

 まとめ

育成就労制度は、今後は、特定技能1号への人材育成の道として、技能労働者の入り口として重要な役割を担っていくと思います。

今後は、施行までの間、徐々に各社の育成就労制度を踏まえた受入れの仕組みを構築していくことが必要になっていくといえるでしょう。