特定技能制度では「特定技能雇用契約」という入管法で定義された特別な雇用契約を締結することになります。
今回は「特定技能雇用契約」とはどのようなものであるか、また、特定技能雇用契約書及び雇用条件書の注意点を見ていきたいと思います。
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特定技能雇用契約とは
特定技能雇用契約とは「別表第一の二の表の特定技能の項の下欄第一号又は第二号に掲げる活動を行おうとする外国人が本邦の公私の機関と締結する雇用に関する契約」(入管法2条の5第1項)と定義されます。
そして、特定技能雇用契約は、入管法2条の5第1項から4項までが定めた基準に適合した契約である必要があります(入管法2条の5第1項)。特定技能の在留資格は、雇用に関する契約に基づき活動する在留資格ですが、この雇用に関する契約は入管法2条の5第1項から4項までの基準に適合した雇用契約である必要があります(入管法別表第1の2「特定技能」の下欄)。もし入管法2条の5第1項から4項までの基準に適合しない雇用契約を締結し、報酬を得る活動してしまうと、働いた外国人は不法就労活動に該当し、働かせてしまった側には不法就労助長罪(入管法73条の2第1項)が成立し得るので注意が必要です。
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では、特定技能雇用契約が満たすべき基準はどのようなものでしょうか。入管法2条の5第1項から4項までの基準は、次のものです。
雇用に関する契約の内容等 (入管法2条の5第1項、2項) |
ⅰ内容及び雇用関係に関する事項 ⅱ適正な在留に資するために必要な事項 |
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雇用に関する契約の相手方となる本邦の公私の機関 (入管法2条の5第3項、4項) |
ⅲ特定技能雇用契約の適正な履行に関する事項 ⅳ一号特定技能外国人支援計画の適正な実施に関する事項 |
これらのⅰからⅳの項目については、さらに具体的な特定技能基準省令という省令により細かく基準が定められています。注意が必要なのは、特定技能雇用契約が満たすべき基準については、契約の内容だけではなく、契約の当事者である法人自体の基準も設けられている点です。
具体的に、どういった基準に適合する必要があるかを見て行きましょう。
出入国管理及び難民認定法(略)第2条の5第1項の法務省令で定める基準のうち雇用関係に関する事項に係るものは、労働基準法(略)その他の労働に関する法令の規定に適合していることのほか、次のとおりとする。
法第2条の5第1項の法務省令で定める基準のうち外国人の適正な在留に資するために必要な事項に係るものは、次のとおりとする。
これらの項目をご覧戴ければおわかりのとおり、これらの基準は、「雇用に関する契約」の内容に関するものです。契約の内容として、上記の各項目に適合している必要があります。
契約当事者となる者に関するものとして特定技能基準省令1条に定められている基準は、次のとおりです。
よく注意が必要な論点として出てくる「非自発的離職者」は、この契約の当事者となる者の基準の中で出てきます。この基準を満たせないと、特定技能として働くことができる雇用契約の基準を満たさないことになるので、結果として特定技能外国人を雇用することができなくなってしまいます。
特定技能雇用契約の書式は参考様式第1-5号を用いて締結している例が圧倒的多数だと思います。通常の雇用契約と異なる記載事項としては、特定技能雇用契約の効力の発生時期を上陸許可・変更許可後に特定技能雇用契約に基づく業務に従事した時点としている点、在留資格を喪失した時点で雇用契約を終了するとしている点だと思います。
この記載は、特定技能制度以外の雇用契約でも追加することを検討して良い条項です。
雇用条件書は、労働条件通知書として労働条件の通知に必要な事項がカバーされる項目が記載されています。原則として、雇用条件書に記載されている内容に従い項目を記載していけば、労基法15条の労働条件として通知しなくてはならない事項が通知されます。
記載する際は、契約の更新の記載により育児休業の適用の有無や期間満了における雇止めの可否が異なってきますので、更新の可能性が全くないのか、それとも条件によるのか、条件による場合はどういった条件によるのかを検討の上記載する必要があります(なお、雇止めは非自発的離職者の発生についても注意が必要です)。
また、雇用条件書には別紙「賃金の支払」が添付され、具体的に支給が想定される基本給や手当を記載します。
介護分野では処遇改善手当が支給される例が多いと思いますが、処遇改善手当は金額が変動するものだと思います。支給される金額が変動する場合、外国人に固定額であるという誤解を与えないように変動する旨の注記を添えるのが望ましいといえます。
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特定技能雇用契約書及び雇用条件書は、外国人が十分に理解できる言語で作成され、外国人が内容を十分に理解した上で署名することが必要です(運用要領41頁)。そのため、記載として項目だけではなく、外国人が理解することができる言語で併記することが必要となります。
賃金や休日等の労働条件に思い違いがあると、働いてから双方にストレスがかかってしまいます。労働条件にそれぞれの認識が一致していない部分がないように、伝わりやすさを意識して特定技能雇用契約及び雇用条件書を作成することが望ましいといえます。