2019年に始まった特定技能制度は、特定産業分野における人手不足の解消を目的として、一定の技能等を有する外国人を受け入れる制度です。特定産業分野は、2022年12月時点において12分野となっており、その中の一つの産業分野に介護が含まれ、徐々に受入れ人数が増加しています。
この記事では、介護分野の在留資格「特定技能1号」を持つ人材の受入れ手続きについて見ていきたいと思います。
【医療・介護に特化した特定技能人材をご紹介します!】目次
外国人の受入れは、受け入れようとする外国人が既に日本にいて在留資格を持っているのか、それとも海外にいて在留資格を持っていないのかによって異なります。
まず、受け入れようとする人材が海外におり、在留資格を持っていない場合を見ていきたいと思います。
図1は、海外にいて在留資格を有しない外国人を、「特定技能1号」の在留資格で招聘する場合の手続です。
まず①在留資格が取得可能かを検討します。この際、在留資格の要件である技能や語学の評価試験への合格だけではなく、出身国と日本との二国間協力覚書における手続についても確認しておくと、その後の手続を円滑にすすめることが可能です。
次に、②入国前の手続として、参考様式を用いて労働条件を通知します。また、「特定技能1号」の在留資格では、特定技能外国人を受け入れる機関である特定技能所属機関が、個々の特定技能外国人ごとに一号特定技能外国人支援計画を作成し、支援を実施する必要があります。一号特定技能外国人支援で行う支援には、入国前に実施するものも存在するため、入国前の手続の段階から一号特定技能外国人支援計画を作成し、支援計画に従って入国前の事前ガイダンスを行う必要があります。
続いて、③必要書類を作成及び収集し、特定技能所属機関の所在地を管轄する地方出入国在留管理局において、在留資格認定証明書交付申請手続を行います。「特定技能1号」の在留資格については、比較的必要書類が多く、申請の難易度が高い類型の在留資格であるといえます。そのため、在留資格認定証明書交付申請に際しては、在留資格に関する専門性を有する弁護士・行政書士に手続の取次ぎや支援を依頼すると、円滑に手続を行うことが可能となると思います。
④在留資格認定証明書が交付されたら、その次は、交付された在留資格認定証明書を外国人に送付し、外国人が所在する国・地域における日本大使館等で査証(ビザ)の発給を申請します。
⑤在留資格認定証明書と査証(ビザ)がそろうと、いよいよ日本に入国(上陸)することができます。在留資格認定証明書と査証を持って、日本に移動しましょう。この際、一号特定技能外国人支援計画では、出入国をする空港への送迎が義務的支援となっているため、特定技能所属機関か、登録支援機関に委託している場合は登録支援機関が、空港へ送迎を行うことになります。また、同様に住居についての支援や生活インフラの立ち上げも支援計画に従って行います。
⑥入国も終わり、いよいよ勤務を開始します。勤務を開始する際には、特定技能所属機関又は登録支援機関は、必要な行政手続等に関する情報を提供する生活オリエンテーションを実施します。また、生活オリエンテーションで説明を行った行政への手続についても同行して支援を行うことになります。
入国直後については、まず、特定技能外国人について住居地の届出を行う必要があります(入管法19条の7第1項)。在留カードをもって住居地の市区町村役場に行って届出を行います。
その後も、四半期ごとの届出や、一定の事項が発生した場合の随時の届出を忘れずに行います。随時の届出は、支援計画の内容や労働条件を変更した場合等に必要になります。その他に、M&Aや組織再編によって特定技能外国人が所属する法人が変更になる場合には、在留資格変更許可申請が必要となる等、手続を見落としがちな場合もあるので、注意しましょう。
続いて、既に日本にいる人材を採用する場合の手続きを見てみましょう。
既に日本にいる方を採用する場合、手続は、在留資格認定証明書交付申請ではなく、在留資格変更許可申請を行います。例えば「留学」の在留資格を有する方の場合、在留資格変更許可申請が必要となることに違和感を持つ方は少ないと思います。ですが、「特定技能1号」の在留資格は、働く法人が個々に指定される在留資格であるため、「特定技能1号」の在留資格を有する人であっても、異なる法人で働くことになる場合には、在留資格変更許可申請が必要となる点に注意を要します。
また、既に国内にいる方であっても、出身国によっては特別な手続が加重されている国もあります。例えば、ベトナムやカンボジアでは、提出書類として、出身国側から取得する書類が必要となります。既に国内にいる方の採用だと、出身国ごとの違いを意識しないことが多いため、この点も注意を要する点だといえると思います。
一号特定技能外国人支援計画に基づいた支援の実施が、各段階に必要な点や勤務開始後に届出を要する点は、海外から招聘する場合と同様です。
「特定技能1号」の在留資格を申請する際に、必要となる書類は多岐に渡ります。在留資格認定証明書交付申請の場合と在留資格変更許可申請の場合とで、必要書類一覧が出入国在留管理庁のウェブサイトで公表されています。
在留資格認定証明書交付申請 | https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/specifiedskilledworker#midashi01 |
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在留資格変更許可申請 | https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/specifiedskilledworker#midashi02 |
参考様式が変更されていることや、また、一部書類が省略可能になっていることがあります。申請の都度、必要となる書類を確認するのが良いでしょう。
スケジュールとしては、内定後、必要書類を収集するのに1か月程度、その後申請して審査に2から3か月を要していることが多いと思います。申請が多い時期は審査にも時間がかかるため、余裕をもって準備をすることが重要です。
特定技能制度については、出身国と日本との間で、二国間協力覚書が締結されています。よく頂戴する質問だと、二国間協力覚書が締結されていない国からは受入れができないか、というご質問を頂戴しますが、受入れは二国間協力覚書の有無とは関係なく可能です。
では、二国間協力覚書によって何が変わってくるかというと、まず、当該国において技能の試験が実施されるかが異なることになります。理論的に、二国間協力覚書締結国しか試験を実施することができないという制限はありませんが、円滑な特定技能制度の推進のために締結するのが二国間協力覚書ですので、試験を実施するのは当該覚書の締結国となることが多いと思います。
また、二国間協力覚書によって在留資格や出国に関する手続が加重される例があります。
例えば①在留資格取得のために必要な書類が増える形で手続が加重される国があります。代表的な例はベトナムとカンボジアで、それぞれ在留資格の申請の際に、他の国の出身者では必要とされない書類が必要となります。
続いて、②査証の発給要件として手続が加重されている国もあります。例えばインドネシアで、査証を取得するときに他の国ではない要件が加重されています。
その他に、③出身国を出国するときの要件が加重されている国や当該国で出国に際し一定の手続が必要な国もあります。例えばフィリピンが該当します。
このように、出身国ごとに手続が異なるので、採用する人材の出身国において何か特別な手続がないか、事前に検討しておくと円滑に受け入れることが可能であるといえます。
この記事では、特定技能制度での人材の受入れ手続の概要、必要書類、スケジュールそして出身国ごとの手続について概観しました。
複雑な手続だと思いますが、一ずつ理解しながら進めるのが、円滑な受入れにつながると思います。